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ロンドン-パリ紀行 パリ編

Thursday 26,SEP,1996

もう朝はゆっくり。ホテルを出たのは11:30すぎてた。
本日はモンパルナスの日ってことで、地下鉄でVavin駅へ。メトロの乗り換えが不便で、時間かかった。
このセーヌ川の南、モンパルナス地区はその昔20世紀初頭、有名な画家や作家が無名のころにあつまっていた界隈で、当時そうした芸術家がよく通っていたカフェがいまでも営業している。そのなかの、ピカソやブラックが常連だったLe Domeにするか、ヘミングウェイが通っていたLe Selectに入るか、どこにしよう。結局赤い屋根の、詩人のアポリネールやコクトー、音楽家ストラヴィンスキー、亡命中のトロツキーも来ていたというLa Rotondeにした。もう腹減ってたのでしっかりと食おうってことで、本日のムニュー、鱒のオリーブオイルソースと、Vin blanc(白ワイン)とCafe。ワインはPichet(小さなデキャンタ)でもしっかりワインクーラーにいれてくるし、しかもうまい。鱒はこれまたうまかった。さすがシーフードに力を入れているだけのことはある。

大満足で店を出て、モンパルナス墓地へ。いろんな文人の墓があるのだが、なにか呼び寄せられるようにして来たこの墓地の案内板をみると、Serge Gainsbourg(セルジュ・ゲンズブール)の墓があった。
まっすぐそっちへ向かうと、彼の親の代のそっけない墓の上にたくさんの花、メッセージを書いたメトロの切符、写真、そしてキャベツ。オレもメトロの切符にちょこっと書いて、置いてきた。
「日本から来ました。あなたのおかげでいろいろおもしろい物事に出会えました。これからもあなたの作品を聴いたり見たりします。Merci!!」


ゲンズブールの墓
  

墓地からVavinに戻って、今度はLe Selectで一休み。今日はポカポカ天気で、暑い暑い。コーラを飲んでのんびりした。
そこから、リュクサンブール公園(ムチャクチャきれい。写真をとりまくった)を通ってカルチェ・ラタン方面へ歩く。


カフェ"Le Select"で一休み。向かいにあるのは"La Coupole"
 

 
リュクサンブール宮殿    リュクサンブール公園の花壇       

そうするとソルボンヌ大学があった。構内にはいると、なんだかパーティーのような、儀式のようなのがあったらしく、おじさんおばさん達がタキシードや古風なドレスを着て(まるでエルキュール・ポワロの世界)ワイワイやっていた。建物にはいると講義のスケジュールなどが掲示板に張り出してあって、建物はたしかに古くて歴史を感じるが、やはり大学は大学。自分の学生時代を思い出してしまった。

もう歩き疲れた。モンパルナスでSTAGEって言う雑誌とELLEを買ったのでバッグも重い。でも今日はGainsbourgの墓も見たし、こうなったら彼の住んでたVernuille(ヴェルヌイユ)通りにも行かないと。ガイドブックの地図にはこの通りは載ってないので、まず街に立ってる地図を求めてぐるぐるぐるぐる行ったり来たり。やっと地図に書いてあるのを見つけた。今いる4区カルチェ・ラタンから西へ行って5、6区St.Germain des pres(サンジェルマン・デ・プレ)へ行くと、さらに西の7区の方にあるとのこと。がんばってそこまでいって、やっとヴェルヌイユ通りに来た。けっこう細いきたない通りで、特に「ここにゲンズブールが居ました」なんて札はない。ずっと通りの最後まで行ったら、もうオルセー美術館だった。もう歩くのはやだ。

メトロでいったんホテルに帰ろうと思ったら、駅がこれまた遠い。やっとの思いでホテルに戻って30分ほどベッドに倒れ込んだ。夜7時になったので、本日の夜のメインイベント「牡蠣を食う」ってことで、もう一度 Vavinへ。(ホテルからOdeon駅まで歩こうと思ったら、またMabillonまで来てしまった。)
"Bar a Huitle"は、わりとまともな、「レストラン」って感じで、一人だけの客はオレだけであとは中年以上の夫婦などが多かった。ワインもちゃんと、テストの儀式もして、牡蠣が運ばれてきた。中レベルの値段のを頼んだけど(89F)、質も中くらい。うまいけど、しなっとしていて塩がきつい。やっぱり葉山であんなにうまいものを食べてしまったので、普通じゃ満足できないのか。
メインのイカのなんとかソースは、わりと和風(醤油)味に近いソースで、しかもつけあわせは米なのでまさにイカめしだった。これまたじつにおいしいが、量が多かった。食事の後半で、かなり待ちの客が増えてきたのでさっさと店を出た。

今日の最後の目標、ワインバー"Henri IV"にいって、うまいワインを飲もう。ホテルの近所のポンヌフだし、遅くなっても大丈夫。ところが行ってみたらもう閉まってた。10時で終わるとのこと。どうしようか。しばし考えたが、他のワインバーをあたることにして、サンルイ島の"Le Franc Pinot"へ。サンルイ島まで近いと思って歩いたら、けっこう距離あった。もう今日はどんだけ歩いてんだろ。ともかくサンルイ島初上陸。
小さな店で、テーブル席はグループや二人連れでいっぱいだったので思いきってカウンターへ。

「赤ワインください。あとチーズも欲しいんです。Fromage blancありますか?」
「ちょっとないねえ。これはどう?Fromage de Chevre」
「うん、じゃこれに合うワインはどれでしょ」
「これにしなさい。Sancerreの赤」

うーん奇遇だなあ。さっき"Bar a Huitle"で飲んだのがSancerre(サンセール)の白だったのだ(ちなみに私の住んでいるマンションの名前は「サンセール神楽坂」)。Sancerreの白はフルーティで中辛口でおいしかった。赤は軽くてうすくて若いって感じがした。Fromage de Chevreも良かったけど、山羊のチーズだって教えてもらってからとたんにくどく感じてしまって、あまり食べられなかった。

「なんだい、もっと食べなよ。(オレの出したのが、食えねえってのかい)」
「いや〜、両方ともTres Bonでしたよ」
「そうかい、そりゃありがとう」
「Au revoir,Monsieur!!」

店を出て、ホテルのあるPont neuf(ポン・ヌフ)へ向かう。
帰り道は、車の通る川沿いの大通りから階段を降りて、セーヌの河べりをゆっくりと歩いた。
じつにロマンティックな深夜の河べりは、カップルがちらほらといたり、黒人のグループが仲間同士集まって、そのなかの一人がプレイする太鼓を聴いていた。
シテ島に、ライトアップされたノートル・ダム寺院。あまりにも美しい。そこにオレは一人でふらふらしてる。
なぜだか、すごく泣けてきた。しばらく河べりにあった木の切り株にすわってじっとしていた。もう長いこと、まわりは仲間同士ワイワイやっている中いつも一人でいたこと。そして今のこの目の前の光景が、この世のものとは思えないような美しさ。これは幻ではないか?現実はどこだろう?オレは今パリにいるの?一体一人で何やってんだろう?
こんなような思いがぐちゃぐちゃになって、涙になって出てきたのかもしれない。

夢のようなセーヌの景色の中、しっかりと足を踏みしめながら宿に帰った。
またこんなに長く日記書いて、またまた夜遅くなってしまった。3時すぎてる〜。

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30/SEP 1996


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