「なっにすんだょぉ〜 っざけんなょぉ!」−パリ1日目−
| ぼくらは、目覚まし時計を忘れていた。でも大丈夫。ホテルの斜め前にある大きな教会が、毎朝鐘を鳴らしてくれる。今日は日曜なので、人がミサに集まってきていた。朝食は、地下の食堂でとる。パン(バゲット)がとてもうまい! ちょっとモチモチしていて香ばしい。コーヒーも抜群にうまかった。
歩いてセーヌ河へ出ると、ノートルダムがそびえ建つ。白い壁が、新築のビルのように、輝いている。団体のバスがぞくぞくと到着している。スーツ姿のオヤジの団体や、日本人の大学サークルみたいな団体が行列をなして、大聖堂前に大挙する。日曜日はミサがあるから、ツアー観光客には人気なのかもしれない。みな小さなカメラを下げている。しつこく何枚もシャッターを切る人たち。ビデオを持っている人は、ファインダーから見てばかりで、肉眼で見ていない。 周囲の雑踏をよそに、ミサは厳かに行なわれていた。グレゴリオ聖歌のような、中世のメロディが、聖堂いっぱいに響く。正面から奥まで、ゴシック様式のアーチ天井が広がっている。グレーにすすけた石の壁がまるで油絵のようで、とても現実感が無い。 観光客は、写真をバシバシ撮っている。心なしか、フラッシュを焚いているのは中国人と日本人が多い気がした。ちなみに自分も撮ったので(右写真)、あまり文句は言えない。 ノートルダムの建つシテ島。その左岸を歩いて、その左岸を歩いて右に折れ、パレ大通り(Boulevard du Palais)に面した裁判所、コンシェルジュリーを通りすぎ、橋を渡って向こう岸の、「パリ右岸」と呼ばれているほうに来た。Chatelet(シャトレ)からメトロで、Charles de Gaulle Etoile (シャルル・ド・ゴール広場)へ。ここに凱旋門がある。地下道から地上に出ると、いきなり凱旋門の真横に出た。いったん離れて、斜めからいいアングルで凱旋門を観ることができるところまで移動した。 凱旋門の上に上ってみよう、ということで、凱旋門の中の階段を登りはじめた。らせん階段はどこまで行っても終わりがなく、運動不足の身体にはキツイ! 登りきったところは資料館になっている。戦士の像は、表情があまりにも誇張した表情されていて、かえってオカシイ。ちょっとキムタク似の若い子が 「なっにすんだょ、きったねえじゃんかよぉ!」 と怒っている顔だ。友達がふざけて野グソを振り回した時のセリフである。 屋上に出ると、雨に濡れた道路と建物が、雨上がりの太陽に照らされて光っている。11月だが、もう冬の風が吹いている。すがすがしい気分だった。でも、屋内に戻るとまた資料館を通る。そうするとさっきの戦士像がまたお目見え。二人してまたもや大笑いしてしまった。 シャンゼリゼ通りを歩いて、カフェに入り、ホットチョコレートを飲んだ。寒くて歩き疲れた時は、ホットチョコレートに限る。今回、Natsuは良い時計を買うのが目標だった。シャンゼリゼのショッピングアーケードを覗くが、日曜日なのでどこも休み。観光客向けに空いている店はあるけれど、どこも高いし、ピンとくるものがなかった。 ひたすらシャンゼリゼを歩いていくと、Grand-Palais(グラン・パレ)のある辺りから並木道になる。ここを観光客はそぞろ歩く。ぼくらも歩いた。ルーヴル美術館が近づいた頃、突然、腹がへってきた。困った。この辺はカフェが見当たらないところだ。凱旋門からひたすら歩いてきて、もう先にはルーヴルが見える。歩くのは疲れた。だが周りはお土産屋ばかりだ。 テュイルリー公園に沿ってのびるリヴォリ(Rue de Rivoli)大通りを歩いていくしかない。強行軍の結果、ようやくレストランが見つかった。カールスバーグを飲んだ。生き返った。フォルミュール(定食)のチキンを頼んだら、素朴なローストチキンで、皮はパリパリでうまかった。トマトサラダは、トマトの味が非常に濃い。Natsuもお気に入りだ。こうして、ようやくルーヴル美術館に入ることができた。ルーヴルは前に一度行ったことがあるし、あまりにも広いから、的を絞って行くことにした。今回のメインはオランダ絵画。順路どおりに行けば、一番最後にお目見えすることになる。フランスでオランダの絵画を見なくてもと思うかもしれないが、これが笑いあり感動ありで、実にいい。中世の、金箔をたくさん使った宗教絵画が好きだ。だれもが無表情で、ブスッとした顔をしながらキリストを迎えていたりするのが、あまりにも現実感がなくて笑える。 それに、ここにはレンブラントの肖像画などがある。レンブラントは他の肖像画とちがって、人物への光の当て方を工夫して、モデルとなった人の性格をうまく表現しているらしい。くわしくはわからないけれど、他の絵には、「まいど!お客さんが気を悪くしないよう、美人にかいときやした!」という商人魂が感じられるが、レンブラントの絵にはそれがなくて、描き手が描きたいように描いている感じがする。 ひととおりオランダ絵画のエリアを押さえた後、よせばいいのに欲が出て、メジャーな絵画や彫刻をめざして館内を歩き回ったから大変だった。地下を降りて、「サモトラケのニケ」像をチェックし、ミロのヴィーナスを求めて反対がわの建物へ進んでいった。地下には「大規模絵画」を銘打った大きな部屋があり、数メートル四方の巨大な絵画がたくさんあった。そのなかに有名な「ナポレオンの戴冠式」もあった。横幅十メートルくらいある。すさまじい迫力にぼくらは軽くハイになっていた。絵の前で記念写真を撮ってしまった。本当は絵の具が劣化するからいけないことなのだ。恥ずかしいことをしてしまったと反省。 ルーヴルを出てもまだ落ち着かない。おみやげ用の絵ハガキを買いに歩き回り(Natsuは絵ハガキマニアなのだ)、ピラミッド型をした出入口までもう一度戻って、メトロでホテルへ。ううむ、歩きすぎた! 少し休んでから、夕飯を食いに、近くのバール・ア・ユイートル(Bar a Huitle)という魚介類専門のレストランへ行った。店名を日本語に訳すと「牡蠣バー」である。前回パリに来たときは、モンパルナス店に行ったのだが、今回は支店が増えていたようで、ホテルの近く、サン・ミシェル界隈にもあった。カキ好きのぼくとしてはうれしい。 「6つ入りのカキ」と注文したつもりが、「6種類の魚介類」と勘違いされて、いろんな貝やエビなどが皿に乗ってでてきた。ぼくはカキさえ食べられればよかったし、値段がいくらするのかわからない。なんとか英語で訂正をし、カキのみの皿が出された。旅行先での食事のトラブルはうんざりだ。しかし、ぼくは最初の皿が下げられる前に、すでにカキを一個食べており、そのぶんカキ一個得したことを思えば問題ない。 メインディッシュには、イワシの網焼きを注文。これがびっくりだった。小さいイワシが丸焼きになって、8匹もならんでいる。ほのかにハーブの香りがするけれど、ただ単に焼いただけのイワシで、油っけが全くない。和食の塩焼きよりもさらにシンプルで、さっぱり、あっさり。こってり味が主流のフランス料理にしては、めずらしいのではないだろうか。つけあわせのポテトもなめらかでとてもよかった。香りがよくておいしかったけれど、8匹はさすがに多い!食べても食べても減らなかった。 Natsuはタラの焼いたのを食べながらだまっていた。そうとう疲れがたまっているらしい。さっき食べたカキが軽くあたったのかもしれない。気持ちが悪いと言っている。カキには慣れていないNatsuだった。ぼくも眠くて仕方がない。沈黙のまま時間がすぎていく。最初に注文しておいたデザートが来る気配はない。 |
![]() この教会の鐘で、毎朝快適な目覚め
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パリ散歩1日目にして早くもダウンしてしまった二人。
このまま旅行を続けることはできるのか?
そんな二人に、思いもかけぬ出会いが待っていた!

