「おんぼろカフェで飲むワイン」−パリ3日目(前編)−
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目覚めると、あんなにいっぱいだった腹が空いている。便通も快調。今日も健康だ。 ノートルダムがホテルから近いから、今日も行ってみた。静かに内陣を見た。ステンドグラスが美しすぎた。昨日行ったサン・ジェルマン・デ・プレは、壁そのものに色がついていたけれど、こっちはステンドグラスは極彩色で、石の壁はあくまでもグレーで統一。やはり重厚、王道という言葉が似合う。 モンマルトル界隈へ出かけた。メトロでピガール(Pigalle)まで出れば、アベス(Abbesses)駅まではすぐだ。そこからアベス通りを西に歩いた。 惣菜屋がたくさん並んでいる。なにか食べたかったがカフェがない。あそこはどうだ、ここはちょっとヤだなと、うろうろしてしまった。今朝は寒くて、完全に冬の空気だ。相方のNatsuがしびれを切らしたころ、アベス通りの終端にさしかかりそうなところで、おいしそうなパンを売っているパン屋を見つけた。 カニが入っていて、見るからにおいしそうなシーフードのパイがある。値札には"Feuillettes"と書いてある。 「ショフェ?」 知らない単語だった。けれども、なぜか言いたいことは分かった。おばさんが、Feuilletteを手にして言う言葉は、「温めますか?(Chauffer?)」 以外に考えられない。 「はい! ショフェ、おねがいします」 おばさんがチンしてくれたばかりの、ホカホカのパンをかかえて、アベス駅方面に引き返し、丘を登って、エミール・グードー広場(Place
E.Goudeau)のベンチに落ち着いた。ここは4年前の旅でもパンを食べたところだった。 Feullettesは、うまいを通り越して、すごい! 外は寒かったけれど、身も心もホカホカになった。坂を登り、モンマルトルの中心、テルトル広場(Place
du Tertre)に出た。あいかわらず観光名所となっていた。 天井に描かれたキリストの絵がちょっと安っぽい。中ではミサをやっている。修道女が唄をうたっている。これもまた賛美歌のメロディとは違って、中世の薫りただようメロディだった。しばし聴き入る。 隣のサン・ピエール教会(Eglise St.Pierre)に入ってみた。1133年に建てられた、現存するパリ最古の教会だそうだ。でも中には誰もいなかった。なにもない。音もない。パリ最古の教会は閑古鳥がなく。 コルトー通り(Rue Cortot)は、細くて寂しげな小道だ。細い石畳をとぼとぼいくと、モンマルトル美術館があった。普通の民家みたいな佇まいで、ここもブラシで描いた油絵のような塀がある。中に入ると中庭があった。草が生い茂って、ちょっとくたびれた感じの中庭。冬だから花が咲いていなくて寂しい感じだけど、秘密の花園に足を踏み入れたような雰囲気だ。鎌倉の小さな寺を訪れたような風情。 中は19世紀の古き良きパリの様子を描いた絵とか写真がそっけなくおいてある。美術館と言うより資料館である。すごい作品に感動!というのはないけれど、とても落ち着く建物で、ホッとできる。寒い中、暖かい部屋でのんびりできるだけでも良い。モンマルトルの散策は、のんびりやらなくちゃ。 ルピック通り(Rue Lepic)を西へ西へ。19世紀のダンスホール、ムーラン・ド・ラ・ギャレット(Moulin
de la Galette)の古い風車は、今は廃墟のようで、怨念がこもっている。というのは、昔、プロシア軍が攻めてきた時、風車を守ろうとしたドブレーさんが、殺されて風車に張付けにされたというエピソードがあるからだ。 「ゴッホの家がある」というので、一生懸命探したその家は、ただ看板があるだけの、たんなる普通の家だった。そんな予感はしていたけれど、それが的中してしまった。 アベス通りに戻ってきた。ひと休みしたいのでまたカフェを探す。アベス通りを南に折れてルピック通りを下る。八百屋とか電気屋とか、庶民のための店が連なっている。 横丁のボロくて安っぽいバーに入った。白いドアの縁を安っぽい水色のペンキで塗って、白も水色も禿げかけて木肌がみえるインテリアだ。 入ってみると、ワイワイやっている客達が連れてきた犬がたくさんいる。ペットショップかここは? 犬も多いが、ハエも多い。そこらじゅうをハエが飛びまわっている。ちょっと怖じ気づきそうになったが、とりあえずテーブル席についた。 ヴァン・ショーは、赤ワインをオレンジと一緒に煮て飲むもので、冬にはポピュラーな飲み物だ。 日本人だからとか、観光客だから軽くあしらうとか、そういう考えではないと思う。あのオヤジは、そこまで考えのまわるような人ではない。単にいつもの仕事をしただけだったと信じている。 メトロに乗って南へ、セーヴル・バビロン駅(Sevres Babylone)。サン・ジェルマン・デ・プレが近い。そっちに向かおうと歩いてみたが、さっきのヴァン・ショーと、午前中に飲んだ風邪薬で頭がボーっとして、しかも腹が減った。ぼくらはシェルシュ・ミディ通り(Rue du Cherche Midi)を、逆方向に歩いていて、サン・ジェルマンから遠ざかっていたのだった。 |
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小雨の降るなか、かるく道に迷ったふたりは、
思わぬ行動にでる。
二人はうまいものを求め、行きついた店で意外なものを口にしたのだった。

