雨の中の出会い−ブリュージュ2日目(後編)−
| 「マリア様のとこで、厄払いしよう」 市庁舎から南西へ歩いて、聖マリア教会に入った。銀で作られているマリア像が美しい。ブリュージュの教会の装飾は、メレンゲを立てたような柔らかい突起がいくつもいくつもあり、グニャグニャ、グチュグチュと、一見グロテスクな印象を受ける。いつまで見ていても飽きない教会内部の装飾。昨日は拝観終了で見られなかった内陣に入ると、王の墓があり、地下の石室がガラス越しに見えた。古代の歴史がそのまま見える。 教会を出ると、右側の少し広い通りの角にカフェがあった。そこでいよいよ念願のベルギービールを飲むことに。ちなみにまだ午前中だ。 「えーと、ベルギービールが欲しいんですけど。ブラウン系のがいいんですけど」 というわけで、Leffe(レフ)がテーブルに置かれた。幅広のグラスになみなみとそそがれ、やわらかく、きめ細かい泡がこんもりとしている。日本のビールではこうはいかない。口に含むと苦味は少なく、ふわっとやさしい味だった。うまい! まろやかな味がどこまでも続いて、おもわず「うう〜ん」とうなってしまう。飲みながら「ふ〜んウマイなあ〜こりゃこりゃ」と言い続けていた(笑)。ゆっくりと、お茶をすするように味を楽しみながら、カフェでのひとときを楽しんだ。 カフェを出てベギン会修道院のほうへ歩いた。ここの暮らしは、中世の頃から変わらない。修道院の前の池は「愛の湖」という。写真のようにとてもロマンティックな風景だ。しゃれたレストランあり、馬車あり、中世ヨーロッパ気分が存分に楽しめる。やわらかい雨が降っている。 お昼は、さっきの聖マリア教会の裏手にあるレストランへ目星をつけてあったので、そこまで歩いた。雨が本降りになってきた。傘を持ってなかったので、とりあえず教会の裏手の広場までたどり着いたが、いよいよ傘が無いとつらい状況になってきた。橋のたもとの、屋根つきの庵みたいなところで雨宿りをした。おなかは空いたけど、やわらかく降る雨が気持ちいい。石畳に水がしたたる。苔の緑があざやかに光る。さーっと、静かな雨の音。 雨をやりすごして、川沿いの細い道を、住所表示を見ながら探しまわり、やっとレストランをみつけた。だが、そこはガイドにあるベルギー郷土料理の店とはちがっていた。「改装したのかな…」。中に入ると、金持ちそうな太った紳士たちが豪華な食事のまっ最中。自分も、ピシッと蝶ネクタイを締めたギャルソンにビールを頼んだあと、メニューをもらうと、その内容は、正統派高級フランス料理だった。「ベルギーの料理が食べたいのに…」 ベルギーではフランス料理がポピュラーだというのはわかる。一度店にはいってしまったので引っ込みがつかないとも思った。しかし、せっかくフランスからベルギーに来たんだし、明日帰るのだから、悔いのないようにしておかないと…。 てきとうに歩くと、さっき通りすぎた広場に出た。庶民的なレストランがある。なんだ、ちゃんとあるじゃん。ようやく遅い昼食にありついた。相方はパスタ。ぼくはスープとムール貝。 次の日、空港へ行く前に、一時間だけブリュッセルに立ち寄った。さすがに都会だ。観光地ブリュージュにはなかった都会の雑踏がある。ちょっとうれしい。Grand-Place(グラン・プラス)のそばのスタンドでサンドイッチを買って食べた。 そして空港。相方がおみやげを買っている間に、バーでひと休み。ここでさらに衝撃の出会いがあった。Belle-Vue Kriek(ベル・ヴュー・クリーク)。野生酵母で三年がかりで熟成させ、木いちごを漬け込んだビール。衝撃の味だった。独特の華やかな香りがひろがり、木いちごの酸っぱい味がからみあって、飲めば飲むほど幸せになってしまう。空港の、さびれたバーで、ぼくはひとり最高の気分だった。うまいものに出会うときほど、幸せなことはない。 旅で食べたもの。歩いた道。一年経った今でも、はっきり覚えている。自分の意思で歩いていたから、簡単には忘れない。今年はどこへ行こうか。相方と二人、新しい出会いに胸をわくわくさせている。 − 完 − |
![]() 市庁舎の装飾もすばらしかった!
![]() 愛の湖に、やさしい雨が降っていました
![]() ムール貝と格闘中。味はよいが量がねぇ… ![]() 議事堂はあたたかみのある雰囲気
![]() ブリュージュ駅にて
![]() ブリュッセル。黄色い屋根のところでサンドイッチを買った |
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