安井健治 作品解説

"Ce mortel ennui(死ぬほど退屈)"
| 安井の書の代表作はなんといってもセルジュ・ゲンスブールの歌詞を書いた、"Ce
mortel ennui(死ぬほど退屈)"
でしょう。これは、フランス語を直接「書」として成立ならしめた記念碑的作品です。 安井は、つねに伝統文化を重んじつつ、その伝統からの脱却を目論んでいました。生前、彼は |
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| なじみのない和歌や俳句を、現代人が読めなくなった字体で書くことには興味がありません。 自分が本当に好きな言葉や詩を、書として表わす。これは何物にも代え難い楽しみです。これが時代を超えて普遍的な書の本質だと思うのです。 |
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という言葉を残しています。 とくに「かな」を得意とした安井は、従来のかな文の題材である和歌や俳句を書くことをせず、自分の気に入った言葉や歌の歌詞をもとに作品をつくりました。 彼はロックやポップスが好きで、デヴィッド・ボウイやセルジュ・ゲンスブールなどの音楽を生前よく聴いており(ゲンスブールに関しては自らジャズオーケストラ用にアレンジをし、演奏を行っています)、安井にとって彼等の歌こそ、自分の書で表現したいテーマだったのです。 デヴィッド・ボウイ
シリーズより:
これらの代表作を含めた、彼自身が生前作成していたホームページを公開しております。 習作に見る心の内面: 当記念館では、彼の遺した習作を保管しております。他の芸術家と同様、習作をみることでその芸術に対するより深い理解が得られると考えております。この「春」という習作をご覧ください。薄墨で練習用半紙に書かれたこの習作は、一見なんの変哲もない、学生が書いたような「春」一字です。
しかし、よく見ると、第二画の横線が短いことに気付きます。しかし、第三画の終端を跳ね上げることで、全体としてのバランスを保っています。第二画の短さによって生まれるとても危ういバランスは、薄墨でにじんだ線と相まって、見るものに不安をもたらします。 もはやこの「春」は、明るい日差しの射す春のイメージからかけ離れ、暗雲たちこめる、不安と苦悩に満ちた「春」にほかなりません。 この習作が書かれた時期は、安井自身、婚約破棄や失業といったトラブルを立て続けに経験し、つらい生活を送っていた頃でした。そんな彼が人生の「春」を渇望しつつ、当時の苦しみをにじませて書いたこの習作は、正式な作品よりも如実に、当時の安井その人自身を表わしていると言えるでしょう。 |
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